◇韓国国税庁による新しい韓日間の制度についての解説
2017年5月12日に韓国国税庁より専門官が来日し、横浜において在日同胞に関連する税制の説明会を行いました。
主な内容としては、
①韓国における相続税・贈与税の税率などの概要について
②新しく始まるCRSについて
の2点についての説明でした。
このうちCRSについて、当日の資料から抜粋してご案内いたします。
◇韓日間CRSによる金融情報の自動情報交換
①導入の経緯
欧米を中心に外国の金融機関口座を利用した脱税を防止するために、非居住者口座情報を提供し合う国際基準の策定が始まり、2014年にCRS(共通報告基準・Common Reporting Standard)が公表されました。その後G20の各レベル会合を経て、韓国日本を含む100の国と地域が2018年迄にこの共通報告基準に従った自動的情報交換を開始する事になりました。
このような経緯を経て、各国は共通報告基準に従った自動的情報交換を実施するための国内法制を整備する段階に移行することになりました。
韓国においては、2015年度税制改正において、非居住者に係る金融口座情報の自動交換報告制度を整備する事になりました。
また、2017年(平成29年)から金融機関による対象口座の特定手続を行い、2018年(平成30年)に報告を金融機関から受け、租税条約等に基づき、共通報告基準に従った税務当局間の自動的情報交換を開始します。
②租税条約に基づく情報交換の概要
経済取引がグローバル化する中、国境を越える取引が恒常的に行われ、資産の保有・運用の形態も複雑化・多様化していますが、租税の賦課徴収を確実に実施するためには、国内で入手できる情報だけではなく、国外にある情報を適切に入手する事が重要です。
しかしながら、国外にある情報を入手するには、外国の主権(執行管轄権)による制約を受けます。
このため韓国を含め、各国の税務当局は租税条約等に基づき、租税に関する情報を互いに提供する仕組み(情報交換)を設け、国際的な脱税及び租税回避に対処することになりました。
韓国は、2017年3月1日現在、67の租税条約等を締結し、107の国と地域において条約適用されていますが、全ての租税条約には情報交換に関する規定が定められています。
この租税条約等に基づく税務当局間の情報交換には、①要請に基づく情報交換、②自発的情報交換、及び、③自動的情報交換の3形態があり、近年韓国では、年間数十万件の情報交換を実施しています。
③OECDで策定された「CRS(共通報告基準)」の概要
「共通報告基準」とは、自動的情報交換の対象となる非居住者口座の特定方法や情報の範囲等を各国で共通化する国際基準であり、これを適用することにより、金融機関の事務負担を軽減しながらも、金融資産の情報を各国税当局間で効率的に交換し、外国金融機関口座を利用した国際的な脱税及び租税回避に対処することを目的としています。
「CRS(共通報告基準)」の概要については、以下の通りです。
◇各国の税務当局は、それぞれ自国に所在する金融機関から非居住者(個人・法人等)に係る金融口座情報を報告させ、非居住者の各居住地国の税務当局に対して、年一回まとめて互いに提供をおこないます。
◇非居住者に係る金融口座情報を報告する義務を負う金融機関は、●銀行等の預金機関、●生命保険会社等の特定保険会社、●証券会社等の保管機関及び、●信託等の投資事業体とされています。
◇報告の対象となる口座は、●預金口座、●キャッシュバリュー保険契約、●年金保険契約、●証券口座等の保管口座及び、●信託受益権等の投資持分とされています。
◇報告の対象となる情報は、口座保有者の●氏名、●住所、●納税者番号、●口座残高、●利子・配当等の年間受取総額等とされています。
◇金融機関は、CRS(共通報告基準)に定められた手順に従って、口座所有者の居住地国を特定し、報告すべき口座を選別することとされています。
具体的には、新規開設口座については金融機関が口座開設者から居住地国を聴取する等して居住地国を特定し、既存の口座については金融機関が口座保有者の住所等の記録から居住地国を特定することにより、報告すべき口座の選別が行われます。
◆本記載内容は2017年5月に韓国大使館から配布された、韓国国税庁「2017재일납세자가 알아야 할 한·일 세금상식」冊子からの抜粋です。
冊子は2017年5月現在の法令を基準に、広範な税務知識の啓蒙のために、概略的かつ、一般的な内容で作成されておりますので、ご留意ください。
個別案件については、かならず所定の専門家の指導を受けることが望まれます。