神奈川韓商ビジネスハングル教室の講師を務めた白香夏先生が翻訳した韓国のベストセラー小説「ワンドゥギ」が日本で刊行されました。
ぜひ、お手にとってください。
白香夏先生の「ワンドゥギ」発刊に寄せた想いを以下、掲載いたします。
翻訳家 白香夏(ぺく・ひゃんは)の想い
「ワンドゥギ」発刊に寄せて
私には小学6年生を筆頭に3人の姪っ子がいる。
大好きな姪っ子達が大きくなるにつれ、叔母として密かに心を砕いていることがある。日本人とのダブルとして生まれたこの子たちが自分の祖国に「出会った」時、祖国の何に、どんな風に、触れるだろうかということ。姪っ子が生まれた瞬間から、私はずっとその思いを抱いてきた。
日本で生まれ、当たり前のように日本の名前を名乗り、父親のルーツですらほとんど意識することのない環境に暮らす、在日4世の姪っ子。
この最愛の姪っ子達に叔母としてささやかにできることといえば、祖国のいいものを、楽しいものを、美しいものを、心が強くなれるものを、翻訳して提供してあげること。それしかないと思った。
姪っ子は本の虫で、小学4年生頃から既に親の本棚にある小説を片っ端から読み始めていた。叔母としては子どもには早いのではないかと思うが、特に東野圭吾が好きなのだそうだ。
本が大好きな姪っ子に、私は「韓国にもこんなに面白い小説があるんだよ」と紹介してあげたい。紹介し続けてあげたい。姪っ子と同様、在日の友人の子どもたちにもいい物を届けてあげたい。本を通じて、韓国のいい部分に触れて欲しい。それがすぐに何かの役に立たなくてもいい。そもそも役に立たないかもしれない。でも私が子どもの頃は、本好きな私は韓国の小説など、全く読んだことがなかったのだ。
本が想像力を育て、時には心の隠れ家としても働く瞬間が、人にはある。そんな時、あまたある外国の翻訳小説のうちに祖国のものもあったならどうだっただろうという思いがある。
本好きの姪っ子に、私は真っ先にこの本を送った。私にできることは、傍にそっと置いてあげるだけ。でもきっといつかは、この本の感想を聞かせてくれるだろうと思っている。
とても個人的な動機だが、これが私が『ワンドゥギ』をどうしても翻訳したかった理由である。韓国の少年少女たちが発刊以来ずっと読み続けている本。教師たちが、その親たちが読み続けている本。隣りにいる友人の話であり、もしかしたら自分の物語でもありうるこのワンドゥギの物語は、韓半島にルーツを持つ青少年のみならず、韓国文化に興味を持っている若い日本の人々にも、韓国の若者と同じものを共有しうるひとつのいいツールになると信じている。
私はこれからもとても個人的な動機を秘めながら、心からいいと思う韓国のものを紹介し続けられればと願っている。
白香夏